最近海外にいても日系企業のグローバルプロジェクトについての状況や今後の計画予定などを聞くことが多くなってきています。今回は海外でのグローバルプロジェクトを行う上での管理のポイントについて私が今まで経験したプロジェクトを元に考えていきます。

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グローバルプロジェクト管理とは

日本国内とは大きく異なり、海外で言語、文化、ワークスタイル、時差などが異なる環境でプロジェクト計画策定、体制を構築し、プロジェクトを効率的に遂行、成功に導く管理方法です。
プロジェクト管理自体は、基本日本国内、海外に関わらず同じ方法/手法でプロジェクトを管理できると思いますが、グローバルプロジェクト管理は海外での特に異なる言語、文化、ワークスタイル、多様なプロジェクトメンバーの中でいかに日本人としてグローバルプロジェクトを管理していくかについてフォーカスしている点です。まず初めて海外プロジェクトを管理する日本人にとっては海外でのグローバルな多様性を受け入れる必要があり、グローバルコミュニケーションを行うことが必須になります。

プロジェクトの課題1つとっても、海外ならではの課題が発生する可能性があります。例えば海外での商習慣や法律、会計制度、政務等の基準が異なるので、ローカル要件をどう業務改善、システムに落とし込んでいくのか、海外では予期しない課題やリスクが発生することもあります。またよくグローバルプロジェクトで発生するのは、外国人が作成するプロジェクト成果物の品質をどう保つのかという課題があります。

このような海外で発生する特有の課題に適切に対応するため、海外での経験やスキルを盛り込んだグローバルプロジェクト管理が不可欠となると感じています。

そのような現状で、私が考えるグローバルプロジェクトの管理ポイントは、下記の3点です。

グローバルプロジェクト計画の策定

グローバルプロジェクトを開始するためにまず行うことはプロジェクトの計画を策定し、プロジェクトメンバー全員でプロジェクトの目的、方針、ゴールなどの方向性を共有することです。
グローバルプロジェクト計画の策定作業では、プロジェクト責任者がプロジェクトの目的や方針、体制、最終的なゴールなどを明確に定義し、プロジェクト全体の作業内容やスケジュールを作成することで、プロジェクト関係者にプロジェクトの方向性と内容を理解してもらいます。

特に日本本社がグローバルプロジェクトを主導する場合、本社側のプロジェクトの意図や方針をしっかりとローカルメンバーに理解してもらい、現地で責任をもってリードしてもらうことが大切です。
これらの計画はプロジェクト上で何か大きな課題や問題があった時に元の方針や目的を再認識し、プロジェクトの軌道を調整するのに役立ちます。

グローバルプロジェクト管理の強化

グローバルプロジェクトでの重要な管理ポイントの1つとしてプロジェクト内でのコミュニケーションがあります。
日本国内の日本人だけのプロジェクトとは異なり、言語や文化が違うプロジェクトメンバー間のコミュニケーションを円滑に行うために、コミュニケーションを図るための会議体を設定し、それぞれの参加者・アジェンダ・頻度を明確に定義したコミュニケーションプランを作ります。

プロジェクトの状況にも寄りますが、頻繁に日本へのプロジェクト報告や意思決定を仰ぐ必要がある場合、現地にProject Management Officeを設置し、日本人メンバーを参加させ、現場からの状況を把握する方法を強くお勧めします。また日本側も状況を受け取るだけではなく、日本本社内で共有、意思決定する体制を構築しておく準備が必要でしょう。

また海外子会社だけのプロジェクトでは、あまり品質については問題になりませんが、日系企業のグローバルプロジェクトにおいてよく問題になるのはプロジェクトの品質です。(外国人の場合、まず業務改善やシステム導入することが目的なので、あまり品質を気にしていない方が多いです。)

プロジェクトメンバーの言語や文化、プロジェクト体制、成熟度の違いによって、成果物の品質レベルが低くなってしまうことや日本との品質レベルのギャップが発生する可能性がありますので、日々のプロジェクト管理において、品質レベル感を合わせておく、内部レビューなど品質管理プロセスを徹底するなどの対応が必要です。但し、高い品質を求めて全体のプロジェクトスケジュールや費用増大を招くことは逆にプロジェクト全体を遅延させる原因となります。品質の費用対効果も考慮しつつ、プロジェクトとしての品質許容レベルの合意や品質管理プロセスを事前に定義することは、グローバルプロジェクトの成功のカギとなるでしょう。

グローバルガバナンス体制の構築

グローバルプロジェクトでの海外子会社担当者の役割と責任、参加率例

グローバルプロジェクトの場合、プロジェクト全体をを効率的に管理するため、グローバルガバナンス体制を構築します。

例えばグローバルプロジェクトが複数拠点になったり、時差が発生する場合、日本本社、海外子会社、ITパートナー等外部リソースを含めたステアリングコミッティ、プロジェクトマネージメントオフィス、プロジェクトメンバーのプロジェクト体制を構築し、役割分担やコミュニケーションを図るためのエスカレーションパスを明確に定義します。

グローバルプロジェクトの場合、各プロジェクトメンバーが日本人のように自発的にプロジェクト全体の遅延を残業などでをカバーすることは基本行いません。各プロジェクトメンバーの役割と責任範囲、参加稼働率(特に海外子会社の担当者)を明確にしておかなければ、プロジェクト遅延が発生することも多くありますので、事前に役割や責任範囲を明確にし、現地のプロジェクト責任者からも承認を得ておくことは重要です。

特に海外子会社の担当者は通常業務とプロジェクトを兼務していることが多いので、彼らの労働条件を踏まえたうえで、プロジェクトの責任範囲やプロジェクト参加稼働率を明確に定義し、参加を促す必要があります。

グローバルプロジェクト管理の3つのポイントはいかがでしたでしょうか。現状グローバルプロジェクトを管理しているユーザの方やコンサルタント、これからグローバルプロジェクトを始めようとされている方々に少しでも参考になれば幸いです。